eポートフォリオでのFeelとThinkの記入が生徒の未来の選択肢を作る
2021/09/01
今回は、SNS型eポートフォリオであるFeelnoteを活用しICT教育を行う、慶進中学校・高等学校の事例を紹介する。
慶進中学校・高等学校は中学校での教育からeポートフォリオを積極的に活用し、ICT教育という情報通信技術を用いた教育手法を行っている学校である。慶進中学校・高等学校では、これから6年後、3年後に大学入試を控える生徒に、中学時代から「自分の進路を考えるうえで大事なこと」を伝え続けている。その自分の将来を見つけるうえで役立つのがFeelnoteである。
こう語ってくれたのは慶進中学校・高等学校教員の田中祐輔氏だ。
FactではなくFeelとThinkを記録することの重要性
FeelとThinkを記録することの重要性は、自分が何に対してどう感じたか・どう思ったかの振り返りが可能で、そこから自分の興味分野を発見したり自分の成長を感じ取ったりできる点にある。
これは、Factすなわち実績のみの記録では振り返ることのできないものである。
進路を考えるうえで生徒たちは、自分は何を学びたいか・将来どんなことをしたいのかを深く考えなくてはならない。これに加え、総合型選抜入試では中学・高校時代に何を学んだかを言語化して相手に伝える力も必要になってくる。
そうなったとき、自分が何に対して何を感じたのか・どう思ったのか、これを振り返ることができれば、自分は将来何をしたいかが明確になる。加えて、自分の成長を自分自身でしっかりと感じ取ることができれば、大学入試で自分の成長プロセスについて話すことも可能だ。
慶進中学校・高等学校が行う、世界で活躍するためのICT教育
前述した通り、慶進中学校・高等学校はFeelnoteを活用し、ICT教育を行っている学校である。まずはICT教育を上手に進めるための方法を説明していく。
まず大事なことは、ICT教育で学んでいくうえでの軸を決めることだ。
例えば、慶進中学校・高等学校では、この軸を「世界で活躍するため」「主体的に学ぶため」「相互理解のため」の3つに定めている。
軸を決めておくことによってeポートフォリオをより効果的に活用できるようになるのだ。
さらに田中氏は、ICT教育を行っていくうえではGoogleとFeelnoteの併用が大事であると語る。
Googleを授業用資料や課題提出ファイルのための仮想教室として使い、Feelnoteを情報交換や自分を表現するため、つまり探究型の偏差値では図れない子供たちの成長記録の場として活用する。
こうすることで、学力と個性の一体化を実現できるのだ。
慶進中学校・高等学校でのFeelnoteの取り組み
田中氏から、慶進中学校・高等学校でのFeelnoteの実際の取り組みが紹介された。
FeelとThinkを記録する
慶進中学校・高等学校では、FeelとThinkを記録するためにFeelnoteを修了論文・学校行事や部活動・授業の主に3つで活用している。
修了論文では、好きな記事に関して自分の感想や考えを投稿したり、他の人の記事を見たうえでの自分の考えをシェアしたりするようにしている。
これにより、文章力・思考力がつき、客観的な視点から物事を見られるようになる。さらに、自分または周りの人が何に興味関心を持っているのか・それに対してどのような考えを持っているのかが明確になるのだ。
学校行事や部活動でのFeelnote活用に関しては、Feelnoteにより、新しいコミュニケーション・コミュニティができるようになる。例えば、見ず知らずの他学年と同じコミュニティを持つことになる体育祭などでは、Feelnoteを使うことによってコミュニケーションが円滑になった。
また授業で自分が考えたことや思ったことを記録することにより、「すごかった」という感想に対して「何がすごかったんだろう」と深堀りして考えるようになった。その結果、思考力が深まったそうだ。これを続けていくうちに、より長い文章が書けるようになる。
SNSを活用しモラルとスキルを醸成する
FeelnoteはSNS型のeポートフォリオであるため、SNS上でのモラルやスキルの醸成にも役立つと田中氏は言う。
教員と生徒自身が一緒になってSNS上でのルールを決めることで、生徒はSNSを安心安全な使い方を主体的に学んでいく。万が一問題が起きたとしても、Feelnoteは学内で完結しているツールのため、問題を早急に見つけ、生徒とともに解決していくことができる。
慶進中学校・高等学校では、ポジティブな言葉を使ってお互いを高め合う・人の写真を勝手に載せないというルールのもと、自分を自由に表現する場としてFeelnoteを活用している。
振り返りを行う
慶進中学校・高等学校では、授業の振り返りにもFeelnoteを取り入れている。学んだことや発見したことを少しでも書くように生徒に促している。
これにより、教員は生徒の理解度を把握できる。さらに振り返りを記録することで、記憶力が定着したり、生徒が長い文章で自らを表現できたりするようになったそうだ。
最初は先生が投稿し、生徒が投稿しやすい環境を作る
Feelnoteを使い慣れるまでは、投稿を恥ずかしがる生徒や何を投稿すべきか分からない生徒もいた。こういった状況を長引かせないためにも、最初は教員が積極的に投稿した。投稿例を見せることで生徒が投稿しやすい環境を作ることができる。
Feelnote活用には教員側の協力も必要なのである。
Feelnoteの成果
田中氏はFeelnoteの活用により、慶進中学校・高等学校では生徒の学習意欲が高まったと言う。
“Feelnoteで自分の興味関心を周りの人と共有し、それに周りの人がコメントする”。このサイクルにより、もっと周りに自分の知識を共有したいという気持ちが生まれ、それが学ぶ意欲につながったのだ。
Feelnoteの課題
田中氏は、以下の5つを慶進中学校・高等学校の今後の課題として挙げた。
- 蓄積された記録を大学入試にどう活用していくか
- どのタイミングでポートフォリオの作成を行うか
- 卒業生のFeelnoteアカウントをどう活かすか
- チェックやフィードバックといった教員の働き方
- 学校と学外でFeelnoteを使いながらどう生徒を育てるか
今後、どういった形で課題を解決し、成果を出していくのかに期待だ。